【栄養士監修】妊娠高血圧症候群の食事指導

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妊娠高血圧症候群の妊婦さんが、どのような食事、栄養を摂ればよいかについて詳しく紹介します。栄養士監修と書かせていただきましたが、このサイトを初めてご覧になられる方もいらっしゃいますので、念のため。私、当サイト管理者は栄養士であります。どうぞ安心してご覧ください。

妊娠高血圧症候群の食事・栄養アセスメント

妊娠高血圧症候群の症状を緩和するためには、基本的にはBMIに基づいた適切なエネルギー摂取、減塩、十分なたんぱく質の摂取、カルシウム・カリウム・マグネシウムなどのミネラル摂取、不飽和脂肪酸のうちn-3系脂肪酸の摂取を心がけます。それでは、一つ一つを詳しく見ていきましょう。

妊娠高血圧症候群とは?原因と症状 赤ちゃんへの影響は?

参考:日本産婦人科学会周産期委員会 妊娠中毒症の生活指導および栄養管理指針(1998)

1.エネルギー摂取 1日のカロリーを制限します

一人ひとり、体重や肥満の度合いが違いますが、おおむね以下の計算によって1日のエネルギー(総カロリー)を決定します。

・非妊娠時 BMI24以下の妊婦 (30kcal×標準体重)+200kcal
・非妊娠時 BMI24以上の妊婦 (30kcal×標準体重)

BMIとは ボディマス指数と言って、人の肥満度を表す体格指数です。体重kg ÷ (身長m)2 で計算します。

妊娠高血圧症候群の方のカロリー摂取量を計算する際は、妊娠中の体重ではなく妊娠前の体重で計算をします。

標準体重とは (身長m)2 ×22 で計算します。適正体重とも言います。

例えば・・・

身長156cm 非妊娠時の体重53kgの妊婦さんの場合

BMI=53÷(1.56×1.56)221.778  BMI24以下の妊婦さんと分かりました。

標準体重=(1.56×1.56)2×22=53.539

算出された値を前述のカロリー計算式に当てはめると、

(30kcal×53.539)+200kcal=1806.17kcal

この妊婦さんが1日に摂取する適切な総エネルギー(カロリー)は、1806kcalと分かりました。

※妊娠中、食事から摂取した血糖(つまり炭水化物や砂糖、甘いものなどの糖質)は赤ちゃんのエネルギー源として使われる量が多くなるため、母体は主に脂肪酸(油脂や脂質)をエネルギーとしています。妊娠中の過剰なエネルギー摂取の制限は、糖質不足から母体がケトーシスになりやすいので注意が必要です

ケトーシスとは、低血糖状態から体内にケトン体が増えてしまう状態を言います。悪心、嘔吐、腹痛などの症状が見られます。

2.塩分 塩分の摂り過ぎは血圧を上げてしまいます!適度に制限しましょう

妊娠高血圧症候群の妊婦さんの塩分は、1日に7~8g程度とします。極端な塩分制限は、勧められません。

また、妊娠高血圧症候群の予防には1日に10g以下が望ましいとされています。以下の調味料の塩分(食塩相当量)を毎食の食事の参考にしてみてください。

調味料  小さじ1杯/ml  塩分(食塩相当量)/g
食塩 6 5.94
濃口しょうゆ 6 0.87
薄口しょうゆ 6 0.96
みそ(米みそ/甘) 6 0.366
ウスターソース 6 0.504
トマトケチャップ 5 0.165
マヨネーズ 4 0.072

3.水分 口が渇いたら水分摂取!基本的に制限はなし

妊娠高血圧症候群の場合、基本的には水分制限はしません。

ただし、1日の尿量が500ml以下の方や肺水腫(肺胞の周りの毛細血管から血液が肺胞内へ染み出した状態)を患っている方は、前日の尿量に500mlを加えるくらいの水分に制限します。

それ以外の方は、口の渇きを感じない程度の水分摂取を行いましょう。

4.たんぱく質 高たんぱく食を心がけましょう

妊娠中のたんぱく質不足は、妊娠高血圧症候群を誘発する原因になりやすく、加えて、低たんぱく血症にもなりやすいのです。

悪阻があると食欲がわかず、食べても気分が悪くなってしまうタイプの悪阻もありますね。体質に個人差はありますが、妊娠高血圧症候群の栄養管理では、食べられるときにできるだけ十分なたんぱく質を摂取することが大切です。ただし、腎機能に障害のある合併症を引き起こしている場合には、必要に応じて低たんぱく食にしなければなりません。(50g未満/日)

1日あたりのたんぱく質摂取量=理想体重×1.0g

妊娠高血圧症候群の予防には、理想体重×1.2~1.4g/日 のたんぱく質摂取が望ましいとされています。

理想体重は (身長m)2 ×21 で計算します。

例えば・・・

先ほどの身長156cmの妊婦さんの場合

理想体重 = 1.56×1.56×21=51.1kg になります。

この妊婦さんの1日あたりのたんぱく質摂取量は 51.1kg×1.0g=51.1g となります。

”たんぱく質”と一口に言っても種類はさまざま。妊娠高血圧症候群の場合、摂取量の半分を肉や魚、卵などの動物性たんぱく質で摂ることを心がけます。

とはいえ、51.1gのたんぱく質って一体どのくらいなの?という方は、下の表を参考にしてみてください。

食べ物  1食あたりの摂取目安量  アミノ酸スコア  たんぱく質量/g
全卵(生) Mサイズ1個(40g) 100 4.92g
豚ロース肉(生)  薄切り2枚(60g) 100 11.58g
鶏むね肉(若鶏) 1/2枚(85g) 100 16.57g
鶏もも肉(若鶏皮つき)  一口大4切れ(90g) 100 14.85g
まあじ  中半身(90g) 100 18.63g
鮭(べにざけ)  1切れ(80g) 100 18g
牛乳 コップ1杯(200g) 100 6.6g
豆腐(木綿) 1/4丁(75g) 100 4.95g

※たんぱく質の栄養価を化学的に評価するための指標を、アミノ酸スコアと言います。アミノ酸スコアが100以上のたんぱく質は栄養価が高いことを意味しています。ここではスコア100以上のたんぱく質を100と記載いたしました。

参考:文部科学省 科学技術・学術政策局政策課資源室「日本食品標準成分表2020年版 アミノ酸成分表」

5.ミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウム)

妊娠高血圧症候群の栄養指導では、1日に900mgのカルシウムの摂取、また妊娠高血圧症候群の予防には1日に1~2gのカルシウム摂取が有効と言われています。

カルシウムを多く含む食べ物といえば、乳製品や大豆製品があります。干し海老、小松菜などにも豊富です。

例えば・・・
牛乳コップ1杯およそ210gでは231mgのカルシウムが摂取でき、木綿豆腐1/3丁およそ100g120mgのカルシウムが摂取できます。

また、海藻に多く含まれるカリウム、マグネシウムには高血圧を予防する効果があるという説もあります。

カルシウムが血管を収縮させる作用があるのに対して、マグネシウムは血管を緩める作用があります。つまり、体内のカルシウムとマグネシウムのバランスが安定することで、正常な血圧を保ちます。

それから、カリウムは過剰なナトリウム(塩分)を尿として排出させ、血圧を低下させる作用があります。

カルシウム、カリウム、マグネシウム、この3つは微量なミネラルとして見落とされがちですが、積極的に摂りたい栄養素です。

6.脂質 動物性脂肪はできるだけ制限します

油は常温で個体の肉の脂身やバター、ラード、ココナッツ油など(飽和脂肪酸)と、常温で液体の植物油、魚介類など(不飽和脂肪酸)があります。

妊娠高血圧症候群の食事指導では、動物性の油よりも植物性、魚介油などの不飽和脂肪酸を摂るように心がけましょう。不飽和脂肪酸の中でも、オメガ3系列(n-3系脂肪酸)の油(α-リノレン酸やEPA・DHAを含む油)は、血液中の脂肪を減らす働きがあるため、高血圧や動脈硬化の予防に効果があると期待されています。

オメガ3系列(n-3系脂肪酸)
α-リノレン酸を多く含む食べ物 EPA・DHAを多く含む食べ物
亜麻仁油  さば
えごま油  さんま
インカインチオイル  まぐろ

※動物性の油脂そのものも、極端に摂り過ぎなければ、体に悪影響を与えることはありません。

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7.生活全般

妊娠高血圧症候群の妊婦さんの日常生活で気をつけることは、できるだけ安静を心がけ、ストレスを避ける、あるいは、今あるストレスを解消することが大切です。

まとめ

妊娠高血圧症候群の妊婦さんが、どのような食事を摂ればよいか紹介しました。

自身のBMIによって1日のカロリーを決定、高たんぱく、減塩を心がけ、水分制限はしません。そして、高血圧を予防するカルシウム・マグネシウムの摂取、余分な塩分を体外へ排出する働きのあるカリウムも忘れずに。

油は、お肉の脂身などは少なめにし、亜麻仁油やえごま油、青背の魚を摂るようにします。とはいえ、動物性のたんぱく質は必要量摂取したいので、鶏肉は皮なし、牛肉や豚肉などは余分な脂は取り除いて食べるなどのひと工夫が大切です。

妊娠高血圧症候群で投薬を必要とされている方は、薬法を守り医師の指示に従って服用してください。

妊娠糖尿病の影響で、妊娠高血圧症候群を併発している妊婦さんは、体重の増加についても管理します。特に妊娠後期は、週に300g以上増加しないように注意しましょう。

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