妊娠糖尿病の食事指導 何をどれくらい食べたらいい?

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妊婦さん

妊娠糖尿病は放っておくと、血糖のコントロール不良で胎児の先天異常や、胎児の高血糖、難産などが起こる可能性があります。また、妊娠高血圧症候群を合併することもありますので、適切なインスリン投与と、食事については栄養管理が必要になります。

妊娠糖尿病の食事指導

妊娠糖尿病は、インスリンの分泌低下や不足によって、糖質の代謝が上手く行われず、脂質・たんぱく質・電解質の代謝障害を起こして、慢性的な高血糖状態になる代謝異常の疾患です。糖尿病の治療は、基本的には食事療法、運動療法、経口治療薬やインスリン注射の薬物療法がありますが、ここではすべての治療の基本である食事療法について、詳しく見ていきます。

妊娠糖尿病のエネルギー量(カロリー)

妊娠糖尿病のエネルギーは、通常の糖尿病患者と同じ量に、妊娠による付加量を加えて計算します。

糖尿病は、Ⅰ型糖尿病、Ⅱ型糖尿病、妊娠糖尿病と分類されますが、いずれの糖尿病も基本的にはエネルギー(カロリー)を適正にコントロールした食事療法となります。

時期 エネルギー量(カロリー)
妊娠初期

25~35kcal/kg×標準体重+50kcal

妊娠中期

25~35kcal/kg×標準体重+250kcal

妊娠後期

25~35kcal/kg×標準体重+450kcal

たとえば、妊娠後期、身長158cmの妊婦さんの場合、

25×54.9kg+450kcal=1822kcal

この妊婦さんが1日に摂取する適切な総エネルギー(カロリー)は、1822kcalと分かりました。

標準体重とは、

身長(m)×身長(m)×22

で計算します。

妊娠糖尿病の食事 何をどのくらい摂ったらいい?

次に、この妊婦さんの食事の内容ですが、PFC比と言ったりもしますが、

たんぱく質:脂質:炭水化物=15~20:20~30:50~60とします。

 たんぱく質(総カロリーの20%) 70g

 脂質(総カロリーの30%) 45g

 炭水化物(総カロリーの60%) 280g

塩分は7g未満としましょう。

この妊婦さんはエネルギー1822kcalでしたので、主な食品構成は以下の表のようになります。

ちなみに、ごはんお茶碗軽く1杯は150gです。お茶碗4杯分で1日のごはん520gが摂れます。

ごはん150gの炭水化物量は55.6gですので、55.6×4杯分=222.6g

1日あたりの炭水化物(総カロリーの60%)は280gでしたのでおよそ1日の炭水化物量に相当します。

穀類は分かりやすくごはん520gとしていますが、パンや麺、おかゆなども組み合わせることができます。

こちらの表を参考に献立を作成してください。

糖尿病患者の食品構成例(g/日)
エネルギー 穀類 豆類 魚介 いも 野菜 果実 海藻 油脂 砂糖 みそ その他
豆・大豆製品 緑黄色 その他

エネルギー制限

1800kcal

ごはん520 50 80 60 50 180 60

緑150他200

150

 

2

 

15 4 8  
 
注意!

血糖値を気にしすぎるあまり、極端に炭水化物(糖質)を制限してしまうと、ケトーシスになりやすいので注意が必要。

 

ビタミンやミネラル

 「日本人の食事摂取基準」を参考に、過不足ないように摂取します。妊婦さんの摂取量をまとめてみましたので、参考にしてみてください。ビタミンAは妊娠後期のみ()内数値プラスしてください。それ以外は妊娠中のどの時期においても同じです。

年齢

18~29歳(妊婦)

30~49歳(妊婦)

栄養素

推定平均必要量

推奨量

目安量

耐容

上限量2

推定平均必要量

推奨量

目安量

耐容

上限量2

ビタミンA

450μg(後期+60)

650㎍(後期+80)

500㎍(後期+60)

700㎍(後期+80)

ビタミンD

8.5㎍

8.5㎍

ビタミンE

6.5mg

6.5mg

ビタミンK

150㎍

150㎍

ビタミンB1

1.1mg

1.3mg

1.1mg

1.3mg

ビタミンB2

1.2mg

12.3mg

1.2mg

12.3mg

ナイアシン

9mgNE

11mgNE

10mgNE

12mgNE

ビタミンB6

1.2mg

1.3mg

1.2mg

1.3mg

ビタミンB12

2.3㎍

2.8㎍

2.3㎍

2.8㎍

葉酸

400㎍

480㎍

400㎍

480㎍

パントテン酸

5mg

5mg

ビオチン

50㎍

50㎍

ビタミンC

95mg

110mg

95mg

110mg

続いて、ミネラルを見ていきましょう。

特に、葉酸と鉄は胎児の成長に欠かせない栄養素ですので、不足しないようにしましょう。

年齢

18~29歳(妊婦)

30~49歳(妊婦)

栄養素

推定平均必要量

推奨量

目安量

耐容

上限量2

推定平均必要量

推奨量

目安量

耐容

上限量2

ナトリウム

600mg(食塩1.5g)

目標は食塩6.5g未満

600mg(食塩1.5g)

目標は食塩6.5g未満

カリウム

2000mg(目標2600以上)

2000mg(目標2600以上)

カルシウム

550mg

650mg

550mg

650mg

マグネシウム

260mg

310mg

270mg

330mg

 リン

 

800mg

800mg

5.5mg(初期+2.0、中後期+8.0)

6.5(初期+2.5、中後期+9.5)

5.5(初期+2.0、中後期+8.0)

6.5(初期+2.5、中後期+9.5)

0.7mg

0.8mg

0.7mg

0.8mg

亜鉛

8mg

10mg

8mg

10mg

マンガン

3.5mg

3.5mg

3.5mg

3.5mg

ヨウ素

170㎍

240㎍

2000㎍

170㎍

240㎍

2000㎍

セレン

25㎍

30㎍

25㎍

30㎍

クロム

10㎍

10㎍

モリブデン

20㎍

25㎍

20㎍

25㎍

 

過去記事▶妊娠高血圧症候群の食事指導

妊娠糖尿病の食事回数は複数回に分けて

1日の食事を5~6回に分けて摂取しましょう。急激な血糖値の上昇を避けるためです。

1回のカロリーを約300~350kcalに設定し、朝食と昼食の間に1回、昼食と夕食の間に1回、というように分割して規則正しく摂ります。また、真夜中や早朝に低血糖になってしまった場合を考えて、枕元に小さく握ったおにぎりを用意しておくといいかもしれません。

おやつや嗜好品は食べてもいい?

お菓子やジュースなどは単糖類を多く含みますので、急な血糖の上昇を招きます。できる限り控えたほうがいいでしょう。食事療法と薬物療法で血糖の数値が良く、コントロールができていれば、コーヒーや紅茶を少量飲むのは良しとします。食事制限中は、時に楽しみや気分転換も必要ですので、砂糖を少し加えたコーヒーでリラックスするのもいいでしょう。

GI値の低い食品も取り入れて

GI値とはグリセミック・インデックスと言って、食品個々の血糖値上昇の遅速を数値化したもので、GI値が低い食品ほど、食後の血糖値の上昇がゆるやかになります。

最近では、このGI値の低い食品を取り入れた糖尿病の食事療法も検討されています。

つわりがあって食べられないときは?

妊娠中につわりがあって思うように食事が摂れないときなどは、不安に思うかもしれませんが、無理して「食べなくてはいけない。」と思い込む必要はありません。つわりは、だいたい妊娠16週までには収まることがほとんどですので、終わるのを待って、食べれば良いのです。

参考

日本産婦人科学会 妊娠糖尿病

日本人の食事摂取基準(2020年版)

臨床栄養管理/建帛社

臨床栄養学実習 食事療養実務入門

 

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